チラシを欲しいからと。
何せ須田くんの家は近所だ。
吉祥寺駅から自分の家に帰る途中にヒョイと寄れば僕の家だ。
ちなみにチラシは家に大量にある。
最初に刷ったチラシが2万枚。
飲んだビールが5万本。
そのチラシが刷り上がったのを宣伝のアルゴピクチャーズで満足げに見ていた僕だったが
ん?
間違いがある。
ストーリー紹介の文章の最初のセンテンス二つが抜けている。
たらりと冷や汗が垂れる。
2万枚。
見なかったことにしよう。
と一瞬思う。
いやいや そんな訳にもいかぬ。
このままでも意味通じる文章かも と思い読み直す。
無理がある。
アルゴの中で相談。
元原稿のデータを確認する。
その時点から間違っていた。印刷屋さんのミスではない。
何で見逃してしまったのか?目を通してたのに。
最近地味に悪いことが続く。
修正シールを貼るという考えはもちろんある。
でも敵は2万枚。
このままでも意味通じる文章かも と思いまた読み直す。
うーむ。
2万枚。
こっちも2万人いればいいけど。
いないし。
花を入れる花瓶もないし。
結局 修正シールを刷ることになった。
「バカバカンス」っぽくていいじゃん!
ってことで。
そっから貼る日々。
電話をかけその時空いてた人に家に来てもらい貼る。
貼る。貼る。貼る。
一人でも貼る。
段々あきてくるけど こういう仕事だと思ってする。
もともとラジオ好きだけどこういう作業にはAMラジオがピッタリ。
それでも嫌になってくるとこれは写経だと思ってする。
人生は修行だ。
新たに修正したチラシも刷り直した。
でもこの間違いチラシを無駄にするのも忍びない。
この子は悪い子じゃない。
馬場元、奥野さん、加瀬さん、松倉、関谷さん、笹倉さん、井出ちゃん(めちゃくちゃ貼ってくれました)、小寺、いさむちゃん、つとむちゃん、高杉さん、神保町シアターの方、稲川さん、あばらせっしょん、その他貼って下さった全ての方に感謝します。
ありがとうございました。
って、まだちょっと600枚くらいあるけど。それは僕が何とかするきに。
んで須田くん。
家に鎮座する修正チラシの山を見て
「僕まだ貼ってないチラシでいいです。自分でシール貼りますから」
いい奴!
やっぱ須田くんはいい人だなぁ。
そして須田くんはチラシを抱えて帰って行った。
「一緒にメシでも食う?』と誘ったけど彼女が待ってるので、と帰って行った。
須田くんが帰った後も少しシールを貼った。ちょっと寂しくなった。
彼女も一緒にメシ食おうって誘えばよかった、って思った。
でも それも何だか気使うかなぁとも思った。
須田くんの彼女は「バカバカンス」を見てどう思うんだろうか?
もっとかっこいい邦ちゃん撮って!(邦ちゃんと呼んでるかどうかは知らないけど、そんな風に呼んでるといいなぁと思う。クーニーとかクーニャンとか うふ)って思うかな。
かっこいい役じゃないもんなぁ。すいません。
須田くん!今度相撲とろう!
宮田宗吉(監督)