ということでシナリオを監督、助監督の先輩、スタッフ、友達に見せた。
感想は色々。なるほどって思うこともあれば、あまりピンと来ないこともあったり。
それぞれの立場、考え方で物を言う。例えば こういうことを描くならこういう前ふりのシーンが必要。とかシナリオの上では笑えるシーンでも実際に撮影してみてそうなるか? 亜衣の最後のシーンはちゃんとこう描かなければダメだ。とにもかくにも主役の二人が肝心。見つかるか?
という意見を言ってくれたのは冨樫監督。監督ならではの発想だなぁと思う。
てなことで人の意見を聞きつつ直しつつ、但し具体的に映画の準備はすることなく日々は過ぎていった。
まだこのシナリオでは撮れない、もっとホン直しをしてから、なんて考えていた。
2005年の秋から冬にかけては冨樫組の「天使の卵」の撮影に助監督でついた。
それで年が明け「天使の卵」の仕上げ中 音楽の入れどころを研究しようと僕の部屋に冨樫さんがやって来た。こわれかけで全体にグリーンがかった画面のテレビで確認作業をした。ラジカセで画面に合わせて家にあった適当なサントラの曲をかけて、ここはいる。ここはいらない、ここはテレビだったら絶対入れるけど映画だとどうか?
そんな作業をした後、晩ご飯でも食おうと吉祥寺の東急の上にあるまつやにそばを食いに行った。
そばをすすっていると「あのホンどうなった?撮らないの」と冨樫さんが聞いてくる。「いやぁ、まだホン直しをしてから」なんて言ってると「ホン直しもキリがないからなぁ」と言う。
それもそうだ。このままズルズルしてても。
するとご自慢の髭をなでながら冨樫さんはこう言ってほくそ笑んだのだった。
「宮田、ズルズルしていいのはそばをすする時だけだぜ(嘘)」
それが2006年1月の話。タイトルはまだなかった。
宮田宗吉(監督)