今年の夏に撮ろう!
その後斎藤組とネットシネマの助監督をした。
その間もシナリオをなるべく人に見せた。
けど、見せなきゃな、と思いながら、なかなか見せられなかったのが風間さんだった。
風間志織監督。「火星のカノン」と「せかいのおわり」という映画で助監督した。
決して妥協しないえらーい監督です、何度も何度もテイクを重ねるそれは驚く程に。
辛辣なこと言うし 酔っぱらいだし でも優しいし 飾らない人っていうか 電話かけるといつも元気に「やっほー」と出るからこっちも元気な感じになるし けど、嘘言わないし 鋭い人だし 「せかいのおわり」の時はヘナチョコチーフ助監督で迷惑かけてマブイ(魂のことです)落ちたって言われるしま、色々言ってますが
なんていうかシナリオ見せるのチューチョしていた。
「つまんね。何これ?」
とか言われたら どうしよう?嫌だな。
でも千本ノック。
見せなければならぬ。
んでシナリオを渡した。
しばらくして感想を聞きに監督の家に行った。
おずおずと感想を聞くと
「つまんないね。これで映画撮らない方がいいよ」
なんてことは言わなかった。思いのほか肯定的なことを言う。
ほんまか?気使ってくれてんのかな俺に?
もちろんこのシーンはいらないとか、このセリフをものまねで言うのはどうか?とか言ってます。
当時のノートを見ますと。
でも おおむね肯定的。
半信半疑な僕。
更に
「私には書けない、もうこういうシナリオ」てなこと言う。
それは「私はもうオトナだから こういうホンは書けない」ってニュアンス。
んーそれは俺がガキってことか?んでもほめてる感じに聞こえるけど 気のせいかな?
腑に落ちない感じがありつつ 旦那でプロデューサーの伊藤さんと息子の光理くんと一緒にご飯を食べた。
むちゃ具だくさんなチヂミだった。でけぇチヂミだなぁと思いながら風間さんがホットプレートで焼いてんの見てると
「はい宮田君返して」とフライ返しを渡してくる
「え!(これ返すの難しそう)」
「だって近所の店で店番して料理出してたんでしょ」って。
それは何年も前の仙川に住んでた時の話で、近所の常連しか来ないちっちゃいちっちゃいレゲーバーで数日店番しただけだし。それで作ってたのもゴーヤチャンプルーとかナポリタンとかそんなんだし。大体よくそんなんおぼえてんなぁ。俺言ったっけ?そも
そも自分がこんな沢山の具を投入するだけ投入しといて返すの俺?
でも返す。
誰かが返さなけりゃならぬ。息子の光理くん(当時2才か?)も見ている。
で返した。
てか上手に返せなかった。具は散らばった。
だってデカイんだもん。
でもこの話は本筋とは関係ない。
チヂミを食べながらタイトルの話になった。仮のタイトルは「カブリオレ」にしていたけどピンとは来てなかった。
「バカ」という言葉がつくタイトルがいいなとは内心思っていた「バカな男」とか「バカだから」とか。でも、もう一つ。
そんなことは言ってないのに風間さんが言う
「『バカバカンス』は?」
お!タイトルに「バカ」が入ってる!
それにかっこつけてなくていい、間が抜けてるし。
海に行くロードムービーだし。
清志郎がかつてヒルビリーバップスに提供した曲に「バカンス」って曲がある。
隠れた名曲で清志郎本人もライブで歌っている。サビの部分は「バカ バカンス 忘れられない」だ。
この曲の心情はこのシナリオの美智男や亜衣の心情ととだぶるじゃん。そっから取ったな風間さん。風間さんは清志郎のファン。僕も清志郎のファン。
何の問題もない。
ということで決定!
「バカバカンス」
それが2006年の5月の話。タイトルは決まった。あとはロケハンとキャスティング、スタッフも決めなければ!
夏の撮影までに準備することはたくさんあるのだ。
(シナリオ編ひとまず終了)
すっごいおもしろいですね!監督の文章。さすが。
続きも楽しにしています。
アイちゃんより。