2008年06月23日

大雨のニュースを見て思い出すこと。

 あれは2005年の夏のこと、まだ吉祥寺の僕の
家つまり美智男の家に引っ越して間もなくのこと
だった。
沖縄に行っていたのだけど台風が来るからと飛行機
が飛ばなくなる前に予定より一日早く帰って来た。
 そんな僕を追っかけるように東京に台風がやって
きて大雨になった。
 新しい部屋でゴロゴロしながら随分雨降ってん
なぁと思ってた。この部屋は雨音が響きやすい構造
なのかな?とも
思ってた。前の前に住んでた千歳烏山の部屋がそう
だったから、ここもそうなのかな、と呑気に。
 そして夜中12時過ぎぐらいか、トイレに立った僕
の視界に靴が浮かんでるのが見えた。
 あぁ靴が浮かんでるなぁと思いながらトイレに入
ろうとする。
 いや、ちょと待て。
 靴が浮かんでる。
 何で?
 と玄関を見ると、三和土の八割ぐらいの高さまで
水が入って来ていて靴が浮かんでるのだった。
 え!
 目を疑う。
 けど、スニーカーやらサンダルやらがプカプカと
浮かんでる。浮かんでるねプカプカと。
 
 ドアを開けて表を見る。
 
 すると一面水浸し。
 ニュースでしか見たことない映像がそこにあった。
 「台風クラブ」か、ここは。
 サンダルを履いて踏み込んでみる。
 膝下ぐらい。
 膝下ぐらいって。
 やべー、これ、えー、部屋が、水浸しになる!
 えー
 雨の中、表の道に出てみることにする、ジャブ
ジャブとサンダルで進んで行く。
 
 表の道には合羽を着たお巡りさんが一人ジャブ
ジャブと水をかき出していた。
 というかお巡りさん一人だけで、
 一人だけ。
 お巡りさんも俺一人でどう出来るもんでもない
し、って感じ。
 お巡りさんに聞くと消防署を呼んでいるらしい。
 消防署?消防署を呼んでどうするんだろう?

 呆然とするが一回家に帰ることにする。
 
 家で合羽と長靴を着用する。(映画のスタッフは
雨降らしのシーンの撮影用にそれなりの装備を常備
してるのだ)

 その格好で表に出ると、同じように出て来た近所
のお兄ちゃんがいる。
 二人顔を見合わすがどうしたもんだか。
 このまま浸水してしまうのか?
 お巡りさんも相変わらす一人だけだし。

 と向かいの家からおばちゃんが出て来た。
 唖然としてる。
 浸水している端から端まで歩いてみる。
 浸水してるのは家の近所50メートルぐらいだけ
だった。道の突き当たりで少し傾斜で低くなってる
せいなのか?
 突き当たりの保育園は完全に水没していて大変な
ことになってるし、その手前の家の駐車場のレンジ
ローバーも水没してる。
 これ廃車になっちゃうんじゃないの?
 ていうかシティもやばいんじゃないの?自分の車
が心配になって戻る。自分のアパートの前の空き地
にとめてるシティを見にジャブジャブ戻る。その空
き地はちょっと高くなってるとこなのでタイヤが1
0センチくらい浸ってるくらいだった。でも、これ
以上浸水したらやばい。
 
 だから家賃安かったんだ。このアパートの家賃は
相場より随分安かった。不動産屋さんで最初に図面
見た時、絶対こんな家賃
のわけない、ボロいか何かあるな、と思った。でも
部屋を不動産屋のお兄ちゃんと見に来たら、全然OK
で即決したのだった。
 
 けど、この有り様。
 あーあ、言ってよ不動産屋さんも、んもー
 ってラクタンしつつプンプンしながら、また表の
道にジャブジャブ戻ると、近所のお兄ちゃんもなす
すべもなく立ち尽くしている。そんな僕たちに向か
いの家のおばちゃんがそこに下水の穴があるはず
だ、そこがつまってんじゃないか?って言う。
 おばちゃんほんまか?半信半疑にお兄ちゃんと二
人でおばちゃんが指さす方向に手を突っ込み手探り
にジャブジャブしてると、
 あった。
 テニスボール!
 テニスボールが排水口に詰まっていた。
 スポン!ってテニスボールを引っこ抜くと、水が
ズバーッと気持ちよく吸い込まれて行く。
 それは気持ちいいくらい。
 ズバーッ。
 誰やねんテニスしてる奴は!
 ズバーッと吸い込まれて行く水に盛り上がるお兄
ちゃんと僕とおばちゃん。
 と、おばちゃんがあっちにもあるはずだと指をさ
す。
 おばちゃん何でそんなこと把握してんの?と思い
ながら、言われた方に行き、手を突っ込み探ってい
ると出て来た。
 今度はペットボトル。
 500ミリリットルのペットボトル。
 再びズバーッと吸い込まれて行く。凄い勢い!
 誰やねんペットボトル飲んだ奴は!

 こうなると下水の口という口が何か詰まってる気
がしてくる。

 おばちゃん!って振り返る。けど、おばちゃんが
知ってるのはそこまでみたいだ。
 自分のアパートの前に戻ると怪しげなふたがあ
る。何のふたかわかんないけどそこを開ける。
 ズバーッ。
 そっからはいろんなフタを開けてはズバーッ。詰
まってんの抜いてはズバーッ。

 段々楽しくなってくる。

 そうこうしてるうちに消防車がやってきて、消防
士さん達がホースで水を吸い出し始めた。
 ゴーッと凄い勢いで水が吸い込まれて行く。

 気がつけば水はだいぶ減っている。
 どうにかなりそう。近所の人たちもチラホラ出て
来てる。

 合羽と長靴姿の僕に「ごくろうさまです」なんて
言う人もいる。

 多分青年団の人か何かと勘違いしてるけど、ま、
いいか。
 
 さっきのおばちゃんが言う

 「こんなの昭和二十何年の洪水以来だわぁ。あの
時は井の頭公園からボートが出てねー」

 えー!それは凄い。井の頭公園って家から歩いて
15分くらいかかる。
 想像するその時の吉祥寺。もう50年くらい前の
こと。ボートが行き交う吉祥寺。ベニスじゃないっ
つうの。
 50年ぶりってことは、しょうがないか。
 疑って悪かった不動産屋さん。ごめんなさい。

 何とかなりそうなので家に戻る。
 合羽を脱ぎながら結構コーケンしちゃったかも
俺、なんて思った。
 でもホントに浸水しなくて良かった。

 翌朝、からりと晴れ上がった空の下、ドアを開け
表に出る。
 昨日のことが嘘みたい。水は完全に引いている。
 僕が開けた色々なフタがあきっぱなのが昨日の痕
跡を残してるくらい。
 と隣の部屋がガチャガチャいって、お隣さんが出
て来た。引っ越してから初めて会う。
 女の人だ。あぁすいません引っ越して来た宮田で
す、昨日大変だったですねぇ、浸水大丈夫でした?
 なんて尋ねると、そうだったみたいですねぇ、な
んて言っちゃ悪いけど少し呑気な感じ。
 よくよく話すと、どーも寝ててこの浸水した状況
を知らなかったみたい。
 だから今ひとつ話が盛り上がらない。そもそも初
対面でいきなりワーッと話しかけてきたから退いて
るみたい。
 そうじゃないって昨日大変だったんだって。

 何だよ俺結構コーケンしたんだけどなぁ。

 なんてことを思ったことを思い出した夜更け、ラ
ジオでは秋葉原の事件について何だかんだと語り
あっています。
 雨は止んだようで、窓の外ではヤモリが張り付い
たまま落ち着いています。こいつ引っ越しした時か
らずっといるけど
 同じ奴じゃないよなあさすがに。ヤモリって何年
生きるんだろ?

 シティ浸水しなくて良かったぜ、浸水して廃車に
なっていたらこの映画撮らなかったような気がする。

                       
           宮田宗吉(監督)
 

 
posted by バカバカンス at 04:07| Comment(3) | TrackBack(0) | キャスト&スタッフブログ
この記事へのコメント
自分のところでも、よくヤモリを見掛けます。

こっちが気が付くと、ササァっと、風呂用給湯機の裏に隠れてしまうんですけど。

それより、たまにムカデが室内に現われる事があります。

家は、一応二階なんですけどねぇ・・・・
Posted by 残月 at 2008年06月23日 12:32
『水の話』っていう映画を思い出しました。
それにしても、おばちゃんはなんでも知ってるんですね。

ちなみに、ヤモリは5〜10年くらい生きるそうで、
場合によっては、20年くらい生きるものもいるそうです。
気になるなら、油性マジックで目印に『バカバカンス』って、
書いておいたらどうすか?
宣伝にもなるし。。。(ならないか)

カツレツ〜〜〜食いたぁ〜〜〜い!!
Posted by ジーホー at 2008年06月23日 21:41
僕が以前住んでたアパートは2000年の東海豪雨で浸水しました。
僕は既に引っ越した後だったけど、後日その付近を通ったとき、想像以上の被害の大きさだったことに衝撃を受けました。
先日の震災にしろ大雨にしろ、天災ってのは人間の力をはるかに超えた脅威なので「なすすべなし」って感じで怖いですね。
Posted by リューカ at 2008年06月23日 22:19
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